
先日、
「空を臨む家」に住まわれているご家族から
「屋根の上にデッキを設置してほしい。」と依頼された。
繁華街での暮らしだからこそ、
空と一体化できる時間を過ごしていただきたかったので、
屋根に上る階段の先にデッキを設置することは、更なる進化で嬉しかった。
安全に、安心して、永く楽しんでいただくために
屋根上の過酷な条件下でも耐候性が高く、腐朽しにくい木材を検討していた。
当然、自然素材の方が人に優しく、使用感がいい。
だから、日本の桧やヒバ等も考えてみたが、今までの経験上、
塗装を頻繁に行っても屋根の上という悪条件下では全く使い物にならない。
そこで、最近一般的にデッキ材等に使われている
セランガンバツやウリンなどの南洋の耐候性の高い材料を検討してみる。
天然木材で耐候性の高いものは、一般的に気乾比重が高い。
その比重はセランガンバツが0.94、ウリンでは1.04と
一般の木材の2倍以上にもなる。セランガンバツやウリンは超重硬で優れた耐久性を持つが、
反面、成長は著しく遅く、
植林にはあまり適さないため、主の保存、育成には適切な管理が必要であり、
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストと評価され、
その急激な分布域の減少等が危惧されている。
「空を臨む家」は優れた温熱環境や自然環境を考慮した、「優しい家作り」が高く評価されて、
IBECから
「サステナブル住宅賞」を受賞した
本当の意味でのエコ住宅だ。
レッドリストに載ってしまうような材料を使用するわけにはいかない。
そこで、次に検討してみたのが、熱処理された木材である。
デッキ材に使われる熱処理は150℃~240℃の高い熱で処理される。
熱処理の目的は平衡含水率を低下させることによる
「耐朽性の向上」ヘミセルロース分解による
「セミロースの結晶化増加」リグニンの解重合と再結合といった熱処理時の変性により,
木材腐朽菌が分解しにくい構造を形成することで
「耐朽性向上させる事」だ。
だが、200℃を超える熱処理は
高い耐朽性は得られるが木材強度の大幅な低下を伴う。
熱処理の手法は多く、最も有名なのが、
フィンランドの建築技術センター(VTT)が開発した
「サーモウッド処理」水蒸気で木材を包みながら180~250℃で加熱するところに特徴がある。
また、フランスで開発された
「レティフィケーション処理」も評判がいい。
これは、予め含水率12%程度まで乾燥させた木材を
不活性がガス存在する常圧の状態で
200~260℃で10~20分加熱する処理法で、
高分子レベルで共有結合を形成させるところが特徴である。
日本にも、「エステックウッド処理」がある。国内産の間伐杉や虫食い松材を利用し、あらかじめ、気乾材をつくることで、
寸法安定性が確保される。
その材に真空ポンプで脱気した後窒素ガスを充填し
120~230℃で24時間程度、高温加圧処理する方法で,
木材にすぐれた耐朽性を与える事ができる 優れた処理方法だ。
材料の種類の少ないのがネックだが、
上手く組み合わせれば十分使用可能だと直感し
今回のデッキには「エステックウッド」を採用した。軟らかく、暖かい、肌触りはとても気持ちがいい。
今回、230℃の加熱による材料なので、当然、強度の低下は免れない。
メーカーからのデータを元に、いくつも力を分散させるように計画した事で問題を解決した。
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